ペットフードに「昆虫食」という選択 未来の食を変える新たなタンパク源

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大きく変わりつつある世界情勢やSDGsの目標により、今後はペットフードの考え方も少しずつ変わっていくかもしれません。

鶏肉よりも3倍ものタンパク質を摂取できる「昆虫食」は、これまでの家禽類に変わり多くのメリットを持ち、かつ持続可能な未来の食を支える栄養源として注目されています。


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未来を変える「昆虫食」とは

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日本では、まだまだ馴染みの薄い「昆虫食」。

タガメやイナゴの姿焼きが登場するなど、テレビ番組の罰ゲームで登場するグロテスクな食材というイメージも強く、昆虫食という「食材」に対して拒否反応を示してしまいますが、いま、食材としての昆虫が見直されてきています。

そのきっかけとなったのが「国連食糧農業機関(FAO)」が2008年に発表した昆虫食を推進する方針に続き、2013年に報告された「食品および飼料における昆虫類の役割に注目する報告書」によるものです。

昆虫食が注目を集めている理由には地球環境に配慮した食材であること、牛や羊など”食肉”として流通している家禽動物と比較してもさらに上を行く栄養価を摂取することができる点が挙げられます。

昆虫食が注目を集める理由とは

日本ではおもしろおかしく取り扱われている昆虫食も、ヨーロッパではもはや昆虫を食べているとは思えない姿に加工された、製品としての昆虫食が注目を集めています。

例えば以下のお菓子。


このお菓子は、昆虫食を扱うアメリカの「CHIRPS(Six Foods)」という企業が製造・販売している「CHIRPS CRICKET PROTEIN CHIPS」という製品。

見た目は湖池屋の「ドンタコス」と似ていますが、中には粉末にしたコオロギがしっかりと入っています。

普通に出されたら絶対にわからないレベルですよね。これなら食べられる方も多いのでは?

この他、昆虫食を取り扱う「BugMo」という日本企業がイベントで作ったパンも。

見た目こそ美味しそうなパンですが、中には同じく”コオロギパウダー”が含まれています。

このように、日本でよく取り上げられる”ゲテモノ“の昆虫食ではなく”加工食品“としての昆虫食が大きな注目を集めてきています。

そしてこの技術が、愛犬や愛猫などが食べるペットフードにも応用されはじめてきているのです。

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高い栄養価を誇る昆虫食

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愛犬・愛猫のペットフードに使用される動物性タンパク質には「チキン(鶏肉)」や「ビーフ(牛肉)」「ラム(羊肉)」などが挙げられますが、これらのタンパク源は昆虫に代替することが可能です。

上記の写真はInsect Dogという昆虫食のドッグフードですが、普通のドッグフードと比べても、見た目は何ら変わらないですね。

以下は昆虫と鶏肉、牛肉、豚肉のタンパク質、鉄分、カルシウムの含有量を比較した表ですが、昆虫から摂取できる意外な栄養価がわかるかと思います。

100g中の含有量

参照:EAT GRUB
タンパク質 鉄分 カルシウム
チキン 19.5g 0.9mg 14mg
ビーフ 19.4g 2mg 12mg
ポーク 17g 0.9mg 6.7mg
コオロギ 69g 9.5mg 75.7mg

日本で購入可能な昆虫食を取り入れたペットフードブランド

愛犬に与えているドッグフードで食物アレルギーが出てきてしまった時には、フィッシュなど別のタンパク源を使用したドッグフードに切り替える必要があります。

そんな場合も単一のタンパク源で作られている昆虫食であれば、食物アレルギーを持つ犬や猫にもフードの選択肢を与えることができます。

また栄養価も高く、場合によっては一般的なドッグフードを与えるよりも良い効果を与えることができるかもしれません。

そんな昆虫食のペットフードは世界でも徐々に増えてきていますが、現時点ではまだ数える程度しか存在せず、日本でもお目にかかることは少ない状況です。

その中でも「Insect Dog(インセクトドッグ)」と「YORA(ヨラ)」というフードブランドは、現時点で日本でも購入できる昆虫食のドッグフードとなっています。

YORA(ヨラ)

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イギリス原産の「YORA(ヨラ)」はタンパク源にアメリカミズアブというアブの幼虫を使用したドッグフードブランドです。

栄養価も高く消化にも優れているYORAのドッグフードは犬だけでなく、地球環境にも配慮された「持続可能なドッグフード」という視点も重視されています。

日本では株式会社レティシアンが輸入・販売を行っています。

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GREEN PETFOOD(グリーンペットフード)

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ドイツの「GREEN PETFOOD」は、タンパク源にコオロギを使用したドッグフード「Insect Dog(インセクトドッグ)」を製造・販売しているフードメーカーです。

本国ドイツではドッグフードのほか、昆虫を原料にしたキャットフードの取り扱いも。

日本では「ワンニャンフーズ」が輸入代理店となり、インセクトドッグの1種類のみ国内で購入することができますが、現時点(2021/01/03時点)で販売中止になっているようです。

AAFCOでは未だ昆虫食は認められず

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ペット大国の一つでもあるアメリカですが、実は昆虫を主原料としたブランドは一つもありません。

その理由に挙げられるのが、ペットフードの栄養基準やラベル表示に関する基準を制定しているアメリカの「AAFCO(米国飼料検査管協会)」による見解。

「甲殻類アレルギー」に関する問題など、現時点でAAFCOはペットフードに関連した昆虫食の取り扱いに難色を示しています。

昆虫類は”エビ”や”カニ”などの近縁種であるため、飼い主さんも含めて甲殻類アレルギーを持つ犬や猫は昆虫食を避けなければなりません。

昆虫は動物性タンパク源の中でも犬や猫にとってアレルゲンとなる確率も低いですが、「食べるもの」である以上、やはりアレルギーが全く無いというわけではありません。

厳重管理で育てられる昆虫なので病気の心配はない?

さらに挙げられるもう一つの理由が、昆虫由来の感染症によるものです。

「感染症」と聞くと恐ろしくなってしまいますが、昆虫界にも犬や猫、牛、鶏など私達と同じように、感染症は存在します。

しかし、実際に昆虫が育てられる環境は厳重に管理された衛生的なハウス管理が基本となっているため、昆虫食と言っても野生化で生息する昆虫を捕獲し、餌にするわけではありません。

昆虫も育った土壌や汚染物質、病原体、農薬など他の動物や植物と同じように悪影響となる成分を蓄積しますが、衛生的・計画的に管理された環境下で育てられる昆虫なので、こうした心配も限りなく少ないと言えるでしょう。

これらの問題が全てというわけではありませんが、より100%に近い安全性が確立できなければ、AAFCOとしても簡単に認める事はできないのでしょう。

未来を変えていく持続可能な昆虫食

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昆虫をタンパク源にしたペットフードブランドの多くはドイツやフランス、オランダ等の国々が製造・販売を行い、昆虫の繁殖業者に関しても同様の国々が主体となっています。

一方、現時点でアメリカ AAFCOが認めている昆虫は「ブラックソルジャーフライ」と呼ばれるハエの幼虫(Hermetiaillucens)のみで、これも犬猫のフードではなくサケの飼料のみ。

ヨーロッパ諸国でも2017年7月以前は動物飼料に昆虫を使用することを禁止していましたが、現在は規制も改正され少しずつ昆虫食も認められてきています。

ドイツやフランスなどで製造される昆虫原料のフードはAAFCOの基準を満たしたものではありませんが、各生産国の基準はしっかりと満たして作られているものです。

EU諸国でもまだまだ厳しい基準は設けられています

ヨーロッパ諸国における基準規定では、使用する昆虫の記載と昆虫のライフステージも記載する必要があるなど、実際にはまだまだ厳しい規定が定められています。

とはいえ、昆虫食を認めていく流れは強くなってきていると言えるでしょう。

SDGsなど世界情勢も大きく変化してきており、AAFCOでもこの問題は数年をかけて議論されてきているようですが、今後はAAFCOも徐々に認めていく方向に進んでいくのではないでしょうか。

一方、日本に関してはまだまだお笑いの”道具”といった感じ。世界基準に追いつくには、まだ時間がかかりそうです。

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【参照】

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