殺虫剤の成分「ピレスロイド」は犬や猫にどのくらいの毒性があるのか

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毎年夏になると注意しなければならないのが、「蚊」を始めとした害虫。愛犬達にとってはフィラリアの驚異もありますので、出来る限り蚊を愛犬に寄り付かせたくはありませんよね。

そこで登場するのが「蚊取り線香」や「殺虫剤」ですが、ペットに対しての悪影響も気になるところ。今回は犬や猫に対して、殺虫剤の影響がどれくらいあるのかを調べてみたいと思います。


多くの殺虫剤に使われる「ピレスロイド」

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Photo credit: kanonn on Visual Hunt / CC BY-ND

殺虫剤で特に有名な商品と言えばキンチョーの「蚊取り線香」ですよね。

この蚊取り線香の主成分(殺虫成分)には「ピレスロイド(dl・d-T80-アレスリン)」と呼ばれる成分が使われています。

また、同じくキンチョーの殺虫剤と言えば「キンチョール」が有名ですが、こちらも主成分は「ピレスロイド(d-T80-フタルスリン、d-T80-レスメトリン)」と、ピレスロイド系の殺虫成分が配合されているのがわかります。

この他、キンチョールのライバルでもあるトリガーノズルでお馴染みのアース製薬「アースジェット」でも、「d-T80-レスメトリン、フェノトリン(ピレスロイド系)」が使われています。

このように、殺虫剤と言えばピレスロイド系と言えるほどに、様々な殺虫剤に使用されているのです。ところでこの「ピレスロイド」とは、どのような成分なのでしょうか。

殺虫剤の元となった「除虫菊」

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Photo credit: wallygrom on Visual hunt / CC BY-SA

かつて殺虫剤は「除虫菊」と呼ばれるキク科の植物が使用されていました。

除虫菊は「シロバナムシヨケギク」とも呼ばれる植物で、除虫菊の胚珠部分に含まれる「ピレトリン」と呼ばれる成分が殺虫効果を持ち、殺虫剤の成分として利用されるようになりました。

一時期は殺虫剤の主要成分として日本各地で栽培されていた除虫菊ですが、戦後は除虫菊の生産よりも食糧の生産が重要視されるようになり、除虫菊の栽培量も減少。

代わりに登場したのが、ピレトリン類似化合物の「ピレスロイド」でした。

「ピレスロイド系」の殺虫剤は犬に害があるか

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ピレスロイドとは、前述でも触れた「ピレトリン」を始めとした殺虫有効成分の総称で、現在ではピレトリンを参考に様々な特徴を持つ殺虫成分が開発されており、それらの成分は「ピレスロイド系」としてまとめられることがほとんどです。

ピレスロイドの特徴は、蚊やハエを代表とする昆虫類に対して速効性のある神経毒を持つことですが、その反面、空気に触れたり熱が加わったりすることで、成分が分解されるという特徴を持ちます。

揮発することでその効果が分解されることから、人体に対しても安全とされ、犬や猫などの「哺乳類」や「鳥類」に対して毒性は低いと考えられています。

反対に、「昆虫類」「両生類」「爬虫類」に対しては強い毒性を示しますので、ペットとして飼育している際には、使用は避けたほうが良いでしょう。

効果を高めるために開発される成分

ピレスロイド系と呼ばれる成分はキンチョールに含まれていた「フタルスリン」のほか、「レスメトリン」「アレスリン」「フェノトリン」など、下記にあげるピレスロイド系でも一部で、この他にもたくさんの種類が存在します。

これらの成分はそれぞれ特徴となる効果を持たせるために開発され、様々な殺虫剤に使用されています。

【天然ピレスロイド】

  • ピレトリン
  • シネリン
  • ジャスモリン

【合成ピレスロイド】

  • アレスリン
  • D-テトラメトリン(フタルスリン)
  • レスメトリン (クリスロン)
  • フラメトリン
  • フェノトリン(スミスリン)
  • ペルメトリン (エクスミン)
  • シフェノトリン
  • ベラトリン
  • エトフェンプロックス(ベクトロン)
  • シフルトリン
  • テフルトリン
  • ビフェントリン
  • シラフルオフェン

ピレスロイド系の毒性について

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Photo credit: UC Davis College of Engineering on Visual Hunt / CC BY

ピレスロイド系の成分にも色々な種類があることがわかりましたが、次にそれぞれの毒性について見てみましょう。

残酷なようですが、実験ではラット、マウスが実験動物として犠牲になっています。(犬も実験動物として犠牲になっています)
そして、殺虫剤の毒性を示すための「致死量」に関しては、目安として「LD50」という目安が用いられます。

半数致死量を表す「LD50」

「LD50」とは致死量を表す数値です。

対象の成分を投与した動物の「半数」が死亡する容量を表す際に「LD50(Lethal Dose,50%)」と表されます。

下記表ではLD50に対しての、それぞれの摂取量が数値として出されています。

ヒト経口推定致死量 マウス経口LD50 ラット経口 LD50
アレスリン 310mg〜440mg/kg 860mg/kg
フタルスリン 10〜100g 1,920mg〜2,000mg/kg
フラメトリン 1,950mg〜3,600mg/kg
レスメトリン 435〜460mg/kg
ペルメトリン 4g/kg 383mg/kg

以上が、ヒト・マウス・ラットが経口した場合の致死量(LD50)となります。

犬が殺虫剤を食べた場合の致死量

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数値だけ見てもピンと来ませんので、例としてアース製薬の「アースマット マイルド」を参考にしてみましょう。

アースマットは1枚に36mgの「dl・d-T80-アレスリン」を配合。上記の数値で単純計算してみると、5kgの小型犬であれば約119枚が致死量という計算に。(小児も同じく)

つまり、誤って1枚〜2枚誤飲しても致死量とはならず、中毒症状が見られるのもかなり稀ということになります。

とはいえ、殺虫成分にアレルギーを持っていた場合にはアナフィラキシーショックを起こす可能性も否めませんので、仮に誤飲してしまったような場合にはすぐに動物病院に駆け込んだ方が安全と言えます。

蚊取り線香の場合

では殺虫剤で一番おなじみ?の蚊取り線香を食べてしまった場合はどうでしょうか。

「蚊取り線香」の成分は「ピレスロイド(dl・d-T80-アレスリン)」で、1巻きに約34mg〜80mg含有。マウス、ラットによる実験では4.8g/kgを経口しても毒性は認められなかったとの実験結果が。

体重10kgの幼児では3.5巻という計算、5kgの犬ですと1巻を誤飲しても毒性は見られない可能性が高いということになります。

また、通常使用方法の20〜30倍の濃度で1日8時間×5週間の間吸引し続けていても異常は見られなかったという結果に。とはいえ実際にやるのはやめましょう。

ピレスロイド系殺虫剤の中毒症状

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犬や猫が殺虫剤を体内に取り込んでしまうケースは「誤飲」によるものや、「吸気」「皮膚に付着」など、様々です。

そこで、ピレスロイド系の殺虫剤による中毒症状は、どのようなものが見られるのでしょうか。

【大量摂取してしまった場合の中毒症状】

  • 吐気
  • 嘔吐
  • 下痢
  • 口唇
  • 舌のしびれ感
  • めまい
  • 顔面蒼白
  • 痙攣

【大量に吸引してしまった場合の中毒症状】

  • くしゃみ
  • 鼻炎
  • 咳嗽(がいそう:せき)
  • 悪心
  • 頭痛
  • 耳鳴り
  • 昏睡

以上が主な中毒症状とのこと。

また、少量でも気管へ誤嚥してしまった場合には化学性肺炎を発症する場合も。その他、ピレスロイド系に対して過敏症を持つ場合には皮膚炎やアナフィラキシーショックを引き起こす可能性があります。

犬が殺虫剤を舐めた場合には?

犬が殺虫剤を誤飲してしまった、もしくは誤って舐めてしまった場合でも、死に至るような悪影響を及ぼす可能性は低い事がわかりました。

また、大量でなければ重篤な中毒は起こりにくいとのことですので、蚊取り線香の一欠片を食べてしまったという場合にも、大事に至るケースは珍しいと言えそうです。

とはいえアナフィラキシーショックの危険性はありますので、早急に動物病院に行くことをおすすめします。

犬や猫に対しての影響は明確ではない

実験はマウス実験ですので、嗅覚の優れている犬にとって他にどのような悪影響があるかは不明ではあります。

中毒になる可能性が低いからと言って、必要以上に殺虫スプレーを撒き散らしたり、直接吹きかけるようなことは絶対にやめましょう。

実験結果では犬や猫の体に危険が及ぶ摂取量の「目安」がわかりますが、可能であれば摂取しないというのが理想ですね。

ピレスロイド系の「動物用」蚊取り線香

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Photo credit: tedd okano on Visualhunt.com / CC BY-SA

ピレスロイド系の殺虫剤が犬に無害ではないものの、限りなく毒性は低いということがわかりましたね。実は殺虫剤の毒性よりも、害虫によるリスクのほうが高いのかもしれません。

そんな殺虫剤ですが、実はペット用の製品もいくつか販売されていますので、いくつかご紹介していきたいと思います。

【金鳥の渦巻】動物用蚊取り線香 10時間用

蚊取り線香と言えばキンチョーですが、キンチョーの「動物用」蚊取り線香がこちら。

有効成分はピレスロイド系のアレスリン、「蚊」「ハエ」の成虫駆除に効果を発揮する蚊取り線香で、効果は10時間と長時間対応。(人間用のスタンダードな「金鳥の渦巻」は燃焼時間3時間)

       

【アース・ペット】ペット用 アース渦巻 AC大型13H

アースの蚊取り線香のペット用。有効成分はピレスロイド系のアレスリン。

キンチョーの蚊取り線香よりも長時間燃焼の13時間。

       

【ライオンケミカル】動物ペット用 天然除虫菊蚊取線香

他の蚊取り線香とは違い、天然成分である「除虫菊末」を使用した蚊取り線香。合成ピレスロイド系ではないので、より犬にとって安心な成分で蚊の駆除が行えます。
口コミを見ると、効き目的には全く問題ないようですが「臭いがきつい」「煙がきつい」と言った口コミが目立ちます。
臭いは「焚き火の臭い」「タバコの臭い」など人によっても違うようですが、天然成分ということもあり、木や草を燃やしたような臭いのようですね。
因みに製造・販売元の「ライオンケミカル」は、洗剤などのライオンとは別会社のようです(過去には繋がりがあったようですが)。

       

【りんねしゃ】蚊取り線香 バウ BOW-WOW 30巻

上記、ライオンケミカル社の蚊取り線香と同じく、天然成分の「除虫菊末」を56.2%使用した蚊取り線香。「着色料・農薬類不使用」など、ペットユーザーを意識した説明もありました。

口コミではライオンケミカル社の製品と比較されているようですが、筆者も比較したわけではありませんので効き目のほどはわからずです。ただ、価格が倍近い差がありますので、悩むところですね。

ブリキ製の線香立具が付属しているのでお得感も。

       

【ドギーマン】薬用 蚊取り安泉香

こちらは「蚊取り線香」ではありませんが、火を使わないゲル状の「蚊取り安泉香」。

口コミでは効き目がある・効き目がないの評価は賛否両論といったところ。とは言え星3.5と平均以上の評価ではあります。

       

さいごに

今回は犬や猫に対して殺虫剤に使われる「ピレスロイド」は、どのくらいの影響があるのかを解説してきました。

殺虫剤成分は「ピレスロイド系」の物がほとんどであり、ピレスロイドには天然成分のもの、合成成分のものがある事がわかりました。

また、ピレスロイドがペットたちに与える影響はかなり限定的なもので、軽度〜重度の中毒症状が起きる可能性はあるものの、誤飲等してしまった場合でも相当量でなければ致死量にはならないと考えられます。

あえて近くで殺虫剤を吹きかけることは避けたほうが良いですが、思っていたよりも影響は低いという感じですかね。ピレスロイドの影響よりも、害虫の影響のほうが大きいかもしれません。

とはいえ、中毒症状には注意しなければいけません。また、ペット用の蚊取り線香にも色々なものがあることがわかりましたので、機会があればこちらでも調べてみたいと思います!

【参照】

※ご紹介した情報はWEBサイトなどから内容を参考・引用させて頂いておりますが、執筆時点での情報の為その後内容に変更があり情報に誤りが生じる場合がございます。
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minotake office代表 北海道札幌市でペット用品販売を行っています。

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