※本記事は2020/04/13時点での情報を参考にしています。
毎日のように報道されている、中国で発生した新型コロナウイルスによる猛威。
新型コロナウイルスの感染源が野生動物という報道も出ていますが、犬や猫を飼育している方が心配するのは自分だけでなく、愛犬・愛猫にも感染しないのかということです。
今回は新型コロナウイルスと、犬や猫のコロナウイルスについて解説していきたいと思います。
もくじ
犬や猫は”新型”コロナウイルスに感染する?

WHO:Coronavirus disease (COVID-19) advice for the public: Myth busters(※「2019-nCoV」:新型コロナウイルスの当初の呼称)
現時点で、犬や猫が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を媒介するという証拠はありません。
ただし、あくまでも ”現時点” での情報となりますので、確実な情報が出るまでは正直安心ができません。
※現時点:2020/03/21時点での情報を元にしています。
<追記:2020/03/02>
香港で犬にも弱いながら、SARS-CoV-2の陽性反応が確認されたとの報道がありました。ただし、この犬がCOVID−19を発症したわけでもなく、犬が感染源になっているという確証が出たわけでもありません。
<追記:2020/03/21>
この犬は数回の検査の後、陰性であると判断されて自宅に戻ることができましたが、残念ながら2日後に亡くなってしまいました。
この香港の犬から弱陽性反応が出たことから、これまで感染例のなかった事実も覆されたため、現在はWHOから発表されていた上記のイラストも削除されています。
<追記:2020/04/13>
2020/04/13時点で、「ペットから新型コロナウイルスに感染しますか?」という問いに対する、WHO(世界保健機関)による回答が以下のように変更されています。
- We are aware of instances of animals and pets of COVID-19 patients being infected with the disease;
(私たちは、COVID-19患者の動物やペットがこの病気に感染している例を認識しています。)- As the intergovernmental body responsible for improving animal health worldwide, the World Organisation for Animal Health (OIE) has been developing technical guidance on specialised topics related to animal health, dedicated to veterinary services and technical experts (including on testing and quarantine);
(動物の健康を世界的に改善する政府間機関として、世界動物衛生機構(OIE)は、獣医サービスと技術専門家(テストと検疫を含む)に特化した、動物の健康に関連する専門トピックに関する技術ガイダンスを開発しています。)- There is a possibility for some animals to become infected through close contact with infected humans. Further evidence is needed to understand if animals and pets can spread the disease;
(一部の動物は、感染した人間との密接な接触により感染する可能性があります。動物やペットが病気を広めることができるかどうかを理解するには、さらなる証拠が必要です。)- Based on current evidence, human to human transmission remains the main driver;
(現在の証拠に基づくと、人から人への感染が依然として主な原因です。)- It is still too early to say whether cats could be the intermediate host in the transmission of the COVID-19.
(猫がCOVID-19の感染の中間宿主になる可能性があるかどうかを述べるのはまだ時期尚早です。)
以前までは「犬や猫がペットに感染するという証拠はありません」と記載されていましたが、香港をはじめとした各国でも犬や猫に感染が広がっている(感染源となる確率や、症状が出るという証拠は今の所ありません!)事実があるため、文言が変更されています。
陽性反応のあった香港の犬に関して

※写真はイメージです。
飼い主さん(60歳)は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染し、COVID-19と診断。
この飼い主さんは、弱陽性反応が出た17歳のポメラニアンを含めた2頭の犬を飼育していましたが、もう1頭の犬(犬種不明)は陰性だったようです。
また、どちらの愛犬もしっかりと世話はされていたとのこと。つまり、同様の条件下で飼育していたのにもかかわらず、異なる検査結果となっているわけです。
香港の農林水産省(AFCD)による犬へのPCR検査は2020年2月26日(木曜)に行われ、鼻腔と口腔から採取したサンプルから「弱陽性」の反応が確認されましたが、糞便による検査では「陰性」。その後、
- 2/28(鼻腔・口腔)
- 3/2(鼻腔)
- 3/5(鼻腔)
以上の日程で検査を繰り返しましたが、弱陽性の反応は変わらずだったようです。
最終的にこのポメラニアンは3/12、3/13日に行われた検査で陰性反応が確認され、ようやく帰宅することができましたが、3月16日に虹の橋を渡ることになりました。
弱陽性ではあるがCOVID-19は発症せず
飼い主さんは解剖による検死を望まなかったため、正確な死因は不明となっています。
17歳という高齢犬であったこと、長期に渡って飼い主から隔離され強いストレスがかかってしまったこと、隔離前から基礎疾患を患っていたなど、様々な要因が引き金となったのでしょう。
一旦は弱陽性の反応が見られたものの、元々患っていた疾患の症状や新たな症状も見られなかったため、新型コロナウイルスが原因で亡くなったわけではないとの見方が強いようです。
大変な目にあった香港のポメラニアンにご冥福を祈ります。
そもそも、コロナウイルスとは?

Photo by CDC on Unsplash
「コロナウイルス」とは突起物のある球状のウイルスの総称です。
大きさは直径約100nm(ナノメートル)ほど。当然ながら顕微鏡でなければ確認することは出来ません。
2020年の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を含め、犬や猫に存在するコロナウイルスは、
ニドウイルス目 – コロナウイルス科 – コロナウイルス亜科
に分類されるウイルスで、コロナウイルス亜科から更に「α」「β」「γ」「δ」というグループ(属)に分けられます。
- αコロナウイルス属(アルファ-コロナウイルス)
- βコロナウイルス属(ベータ-コロナウイルス)
- γコロナウイルス属(ガンマ-コロナウイルス)
- δコロナウイルス属(デルタ-コロナウイルス)
コロナウイルス亜科について
- SARS-CoV(SARSコロナウイルス)
- MERS-CoV(MERSコロナウイルス)
- SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)
上記の名の知られたコロナウイルスは、βコロナウイルス属(ベータ-コロナウイルス)のコロナウイルスです。
一方、
- CCoV(犬コロナウイルス)
- FCoV(猫コロナウイルス)
についてはαコロナウイルス属(アルファ-コロナウイルス)のコロナウイルスです。
上記の通りコロナウイルスにも種類が存在しており、今回世間を賑わせている新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)と、犬コロナウイルス、猫コロナウイルスとは異なるグループのコロナウイルスなのです。
犬や猫のコロナウイルスは人にも感染する?
上記で説明してきた通り、基本的に犬や猫のコロナウイルスがヒトへと感染する事はないと考えて良いでしょう。またその逆で、今回の新型コロナウイルスが犬や猫へも感染を拡げることも考えにくいことなのです。
ただし、ウイルスは変異することもあるので、今後は形を変えて感染する可能性も0%ではありません。
また、コウモリに関してはαコロナウイルスとβコロナウイルスに共通して感染するため、犬や猫、人も含めて絶対に感染しないという確証はありません。
現在のところ、犬や猫のコロナウイルスが人にも感染するということは確認されていませんので、過度に心配する必要はありませんが、手洗いやうがいといった最低限のケアは必要といえるでしょう。
犬コロナウイルスについて
犬コロナウイルスの感染経路となるのが、ウイルスを含んだ糞尿からの経口感染で、その多くが親犬→子犬へと感染を拡げているケースがほとんどと考えられています。
また、犬コロナウイルスにもいくつかの種類があり、比較的に一般的なのが「犬コロナウイルス1型」「犬コロナウイルス2型」、他にも「犬呼吸器コロナウイルス」という犬コロナウイルスも存在します。
子犬に多く、他の病気を併発すると危険な状態に
犬コロナウイルスによる感染症状は子犬がほとんどで、成犬は無症状である場合がほとんどです。
子犬であっても軽症であれば下痢や嘔吐、食欲低下といった症状が引き起こされますが、動物病院で対症療法を行うことで回復が見込まれます。
ただし、「犬パルボウイルス感染症」などの感染症を併発してしまうと、命を落としてしまうケースが多くなります。
子犬は体力も少ないため早期発見が非常に重要となりますので、下痢がひどかったり、便の悪臭がいつもと異なる場合は念の為、動物病院で検査を受けるようにしましょう。
猫コロナウイルスについて
猫コロナウイルスも犬コロナウイルス同様、糞便や水飲みなどの経口感染によって感染し、症状も下痢や嘔吐、食欲低下と同様のものですが、猫によって症状は異なります。
ただし、猫コロナウイルスの感染猫のうち、低い確率で猫コロナウイルスから「FIPV(Feline Infectious Peritonitis Virus)」という恐ろしいウイルスに突然変異する場合もあります。
外飼いをやめ、家庭内でのみ飼育することが大切です
FIPVによって引き起こされる「FIP(猫伝染性腹膜炎)」と呼ばれる病気。
猫を飼っている方であれば聞いたことがあるかと思いますが、致死率もかなり高く、多くの場合は命を落としてしまう事となります。
猫の場合、母子感染はもちろん多頭飼育や外飼いを行っているケースも多く、毛づくろいや喧嘩などから経口感染する場合が多いため、外飼いは避けるようにするのが一番の回避策となります。
混同しがちなウイルスと病名の違い
おまけとして、混同しがちな「ウイルス」と「病名」の違いについて説明していきたいと思います。
報道では「コロナウイルスに感染」といったように、コロナウイルスへの感染=病名かのように扱われていますが、コロナウイルスとはウイルスの名称であって病名ではありません。
コロナウイルスといえば、2002年の中国で発生した「SARS(サーズ)」という病気が非常に有名ですが、SARSとは重症急性呼吸器症候群(Severe Acute Respiratory Syndrome)の略称です。
このSARSの原因となるコロナウイルスがSARS-CoV(Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus:SARSコロナウイルス)というコロナウイルスです。
一方、今回猛威を奮っている新型コロナウイルスはSARSコロナウイルスの近縁種で、SARS-CoV-2(Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2)というSARSコロナウイルスが原因となっています。
※当初は「2019-nCoV」という仮称で呼ばれていました。
新型コロナウイルスによって発症する「COVID-19」
2020年2月11日、この新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」によって引き起こされる病名がWHOによって「COVID-19」と決定されました。
因みに、COVID-19(CoronaVirus Disease, 2019)という病名は”2019年に発生したコロナウイルス” という意味を持つという病名です。
新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」はSARSコロナウイルスの近縁種ですが、SARS-CoV-2に感染することで発症する病気は、SARSではなく「COVID-19」という病気というわけです。
今回の新型コロナウイルスを例にまとめると、
- コロナウイルスの名称が「SARS-CoV-2」
- SARS-CoV-2の感染による病名が「COVID-19」
となります。
追記:2020/04/13
【重要】アニコム損保が動き出しました!
大手ペット保険会社で知られるアニコム損保が、新型コロナウイルスに感染してしまった方の、ペットを救うためのプロジェクトを開始しました。
このプロジェクトでは、アニコムが所有している施設の一部を開放し、新型コロナウイルスに感染してしまった飼い主さんが飼っているペットを、無償で預かってくれるという内容です。
- 保険加入者でなくても利用ができます。
- 無償で利用できます。
- 本人、または家族が新型コロナウイルスに感染している方が対象です。
- 犬・猫以外のペットも検討中とのことです。
- 東京近郊が予定されていますが、居住地域に応じて検討とのことです。
ポイントだけまとめましたが、サービスが必要な方は、すぐに頼っていただければと思います。
詳細は下記のリンクを確認してください。
- アニコム損保公式HP:コロナ感染者のペットを無償でお預かりする「#StayAnicom」プロジェクトを始動!
- アニコム損保公式Facebook:https://www.facebook.com/anicomgroup/
- アニコム損保公式Twitter:https://twitter.com/anicom_inc
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さいごに
犬や猫以外の動物にもコロナウイルスは存在しており、それぞれに異なる感染症状が引き起こされることを説明してきました。
人間のコロナウイルスがペットに感染するケースは現在のところ考えにくい感染ルートとなりますが、ウイルスは形を変えて悪影響を及ぼしてきます。
今回の新型コロナウイルスでも気付かされますが、普段からウイルスの感染を未然に防げるよう、愛犬・愛猫も清潔な飼育環境を整えてあげるようにしましょう。
【参照】
- Coronavirus disease (COVID-19) outbreak : WHO(世界保健機関)
- 新型ウイルスの病気、正式名称は「COVID-19」WHOが命名 : BBC NEWS JAPAN
- コロナウイルスとは : NIID(国立感染症研究所)